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以前アンソロに寄稿させていただいた「ヴェールには、きっと晴れの日。」の前半部分です。



 結婚式は、自宅で。
  
 と言うと、畳の間にお膳を並べた親族のみの慎ましやかな集まりや最近流行りのアットホームなホームパーティー式の立食会などを思い浮かべるかもしれないけれど、そもそもその『自宅』の規模が並ではないのだから中身も比較しようが無かった。
 挙式は敷地内の小さな聖堂で。「小さな」というのはあくまでも家人の言葉であって、下手な結婚式上のチャペルなどよりもよっぽど広い上に、流行ばかりを追った急作り感溢れる安っぽさもない。披露宴は、母屋の大広間。 これまたそこらのホテルの広間よりも広いのだから笑えてしまう。日頃から国内外の賓客を招いて舞踏会が催される家って…なんだ。城か。…城だ。
 祝いの席だからといって三ツ星の店に料理を頼んだり、有名シェフを招くようなことは、しない。 何故ならば必要無いからだ。この家の厨房には、舌の肥えた一家や賓客を唸らせる腕を持った料理人が常に控えている。
「ーーーなんつーとこに嫁ぐんだ、私は」
「うん?」
「いや…何でもない」
 付き合い始めてもうすぐ十年。この度、私こと柿枝鶇は高校時代からお付き合いさせて頂いている牛尾御門さんに正式に結婚を申し込まれまして、入籍、挙式を行う運びとなった訳ですがもうこの結婚式の規模が私の手に余るものでして。目眩のするような式、ソレを自宅で。分かってはいたけれど、やはり意味が解らない。自宅、といっても実際に結婚後に二人で住むのは新しく買ったマンションなので、正しくは旦那の実家、というべきなのだけれど。教会や式場を借りる事をしないのは、日程や時間の調整が煩わしかったからだそうだ。そこに自由に使える大容量の見苦しくない箱があるのだからもうそれを使ってしまえばいいじゃない、ということらしい。並みの家に住む庶民では出来ない発想だ。
 招待客も、高校時代の共通の友人達や後輩を呼ぶ時点で人数が多くなるだろうな、とは思っていたけれど話はそんなレベルではなかった。あんな大企業の重役やら、こんな国の在日大使やら、普通に暮らしていればそうそうお目にかかる事の無いであろうレベルの方々の名前が招待リストにぼんぼん放り込まれている。私は、こんな人達と挨拶を交わさねばならないのか。いくら「君は座っているだけでいいよ」と言われても一応社会常識くらい持ち合わせているつもりであるし、一切ノータッチと言う訳にもいかないだろう。気が重い。
 手元に目を戻して、途方も無い量の招待状を眺める。万年筆を握り直して溜め息をつく。コレも、根気だ。ふと同じように私の手元見た御門が、チラ、と私の目を覗いてまた手元に視線を向けて口を開いた。
「…指輪、まだ変えてないのかい?」
「あぁ、」
 今、私の左手の薬指に嵌っているのは牛尾が大学を卒業するときに「きちんと仕事に慣れて落ち着いたら結婚して欲しい」と言われて渡された婚約指輪だ。シンプルで気に入っている。牛尾の経済感覚からするとおそらく比較的廉価なものだったのだろうと思うけれどーーー普通の学生の感覚ならば十分すぎる程高価だろうーーー本人がアルバイトをして貯めた資金で買ったものだと聞いて私は面食らった。あんなに忙しそうな学生生活を送っていて一体いつ働いていたのだろうかと。「結婚して欲しい」と改めて渡された結婚指輪はそれに比べると幾分か華やかで、彼が私に持たせたいものと私の好みとの間で彼なりに悩んだ結果の着地点なのだと思う。
「気に入ってるのよ、これ。付けていられるのもあと少し何だからいいでしょ?」
「学生の頃の僕の方が可愛かった?」
「何、ソレ」
 ぷ、とふきだすと拗ねたように私の薬指の爪を撫でて続ける。
「渡した日は嵌めてそのまま過ごしてくれたのに、それ以来またその指輪に戻っているから今の僕が送った指輪じゃ不満なのかと思って」
 馬鹿だなぁ。そんなんじゃないのに。たしかに、寝る間を惜しんで稼いだバイト代で指輪を買って来た三年前のあんたも今思うといじらしくて可愛いけれど、別にあの頃のあんたの方が好きだから頑にこれを外さない訳じゃないのよ。
「その日になったら、あんたがまた嵌めてくれるんでしょ?」
 そうしたら、それからはずっとその指輪をつけて過ごす事になるんだもの。まだ真新しい指輪をつけるのも、この指輪と別れるのも、もったいなくて、くすぐったくって。
 それでも旦那様は少し不満げだったけれど、ニルギリが仕立て屋が来たと呼びに来たので二人で席を立った。もちろん、ウェディングドレスもお色直しも全てオーダーメイドだそうだ。普通の財力じゃ、この一回の挙式だけで破産しそうだ。つくづく普通じゃないなぁ、と思いながら極々一般的な中流階級の過程で私を育ててくれた両親が腰を抜かさないだろうかと少し心配になった。
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以前アンソロに寄稿させていただいた「ヴェールには、きっと晴れの日。」の後半部分です。



「ー…鶇先輩、すっごく綺麗でしたね!」
 目をキラキラさせて凪さんが言う。
「私、親戚以外の結婚式ってはじめてで…テレビで見るような芸能人の方の披露宴みたいに盛大でびっくりしちゃいました」
「いやー流石牛尾家というかなんと言うか、俺もマジ尋常じゃない規模でビビったっす」
 うふふ、と笑って凪さんは手元のブーケを嬉しそうに眺めた。それだけで、俺には彼女が花嫁のように見えた。式の最後にセンパイが投げたブーケはくるくる回りながら落ちて、高く伸ばされた腕の間を掻い潜り、凪さんの手元にすっぽりと収まったのだ。
 やはり女性にとってウェディングドレスや結婚式は特別なものなのだろうとぼんやり思った。凪さんの、アップにして大きく晒されたうなじに残っている後れ毛が、夕日にキラキラ光って見えて綺麗だった。
「…あのっ!」
 ぴたりと足を止めた俺を振り返り、凪さんが「どうしました?」と首を傾げる。やっぱり天使だと思った。あんなバカでかい式なんか挙げられないだろうし、いきなり新築のマンション買ったりなんか出来ないけど。どうしても、俺が、幸せにしたい。
「あの、勢いとか、便乗とか思われるかもしれないけど、そういうんじゃなくて、」
「猿野さん?」
「俺と結婚してください!」
「………えっ」
 凪さんは、ぱちぱち、と睫毛を瞬かせてから、驚いた形に薄く開いていた唇を隠すように口元に手を当てた。そうして俯く。二人して、道のはしに立ち尽くしたまま。急速に顔が熱くなって、そして一気に冷めていく。沈黙が痛くてじっと黙っていられない。
 衝動的だけれど、衝動だけじゃない、ずっと考えていたことだった。本当に何年も、ずっと。今まで何度言おうかと思った言葉だった。今さらあとには引けない言葉だ。だけど、
「…ははは…なんて…」
「ひどいです」
「えっ!」
 返事が無い事に焦って、何時ものように誤摩化すべきか流すべきか少し迷って自棄気味に冗談にしてしまおうとして。畳み掛けるように詰られて真っ青になる。こんな風に早まって破局だなんて。馬鹿!嘘だ!冗談じゃない!
「あの、…あの、なぎさん」
「なんでそんな大事なことこんな道端で言っちゃうんですか。なんでそのまま誤魔化そうとしちゃうんですか。天国さんにとってはそんなにどうでもいい事なんですか?」
「いや、あの、そうじゃなくて」
「私にとってはもの凄く大事なことばなのに」
「なぎさ、」
「道端で、私だけ、こんなにぼろぼろ泣くなんて…恥ずかしいじゃないですかぁ…」
「!!」
 ぐす、と鼻を啜る音がして慌てて細い肩を抱きしめる。泣かせたのは俺だとわかっているけれど、もうどうしていいのか、何を言っていいのかもわからない。撫でた髪がさらさらと気持ちがよくて、こんな時なのに少し幸せだと思った。
「ごめんなさい」
「何にあやまってるんですか」
「あの、な…泣き止んでください…」
「あまくにさんのせいじゃないですか!ばか!」
「ご、ごめんなさい」
「大体いっつもそうです、女心なんか全然わかってない。私だって少しくらいは、ロマンチックなことに憧れたりもするんです」
「…ごめんなさい」
 これは久々の本気のお説教だ。ずん、と落ち込む。だけど、どうしても言わずにはいられなかったんです。どうしても幸せにしたくて、大事にしたいのに、いつも空回りばかりするけど嘘じゃないんです。あなたのことがすきですきでたまらないんです。
「答えなんか、決まっているのに」
「えっ 」
 ぐっと顔をあげた凪さんが、鼻をすんとならして、きっと俺を見上げて挑みかかるように言う。
「もう一回ちゃんとやり直ししてくれるまで、答えてあげません」
 こんな時でも、死にそうな程可愛い。手が震えるくらい。
「こんな道端で、いいんですか」
「始めたのはあなたじゃないですか」
 今さらかちんこちんになりだした俺に、可笑しそうに少し凪さんが笑って、俺は大きく息を吸い込んだ。
 
「凪さん、おれと、


おひさしぶりです。
いきています。

こちらのアンソロにちょっとだけ原稿を寄せさせていただいたのでお知らせを…



ミスフルお姫様アンソロジー『BB princess』

当日一般で会場に行くかどうかちょっと悩んでいるところなのですが多分ちょろっとうろちょろして帰るのではないかなと…
同人イベントなんて昔々地元で参加していた以来なのでそわそわ。オンリーというものに実は足を踏み入れた事が無いのでなんだか…!
タイトル思いつかな過ぎて。すみません。
やおいので鍵かけてます。CP名をローマ字に→母音を抜いた4文字です。
18歳以下、高校生以下の方の閲覧は御遠慮ください。

体位の話/ぼんぼる
   
 あのひとのこころがよめないのです。


 そりゃあ、利吉さんはプロの忍者なのだから、僕なんかが容易く計り知れるような人ではないのでしょう。そう思ってもそれで全てを納得出来る筈もなく、身の内にざわざわしたものを抱えたまま僕はここで暮らし、待っている。僕なんかに計れるような人ではないでしょう。計らせるような人ではないでしょう。全て素知らぬ振りで済まして澄ましているのでしょう。この場所を除けば、まるで僕に関わる事など、なく。
 ならば、ならばなぜあの夜彼は僕の肌を暴こうとしたのだろうか。
 そうしてなぜそのまま暴ききってしまうことをせずに自ら乱した僕の夜着の襟を正したのだろうか。
 誰かの声がする。そりゃああの人だってどうしようもなく腹の底に欲が溜まる事くらいあるでしょう。それ以上溜めておけなくなった時にたまたま近くに居たのが僕だっただけでしょう。色街に行くよりも簡単に済むと考えて結局僕の身体になぞ興味を持てなかったのでしょう、と。果たしてそうだろうか、と別の声がささやいた。あるいは彼はただお前の常の不手際や間の抜けっぷりを余程腹に据えかねて手ひどく乱暴してやろうと考えたのかもしれない。途中でやめたのははなから最後までする気などなかったのかもしれないし、彼の良心がそこまでせずとも良いのではないか、と考えたのかもしれない。けれど、と更に言い募る声。彼はあの夜どこか苦しげに僕の名を呼びながら、普段の僕への所作から思うと驚く程優しい手つきでこの髪を、頬を撫でたのだと。あの声を睦言の様だと感じたのは僕だけでしょうか。かすかに一つ付けられた首元の吸い痕などもう消えかかっていて、こんな僕ではもうあの晩のあの人の顔や仕草が本当の事かすら揺らいで疑ってしまいそうです。
 嗚呼…あの人のこころが見えない。

 朝になって起きてみればあの人の姿はなく、枕元に記名の済んだ出門票だけがありました。そうして顔も見せずに去ってゆくのですね。…いってらっしゃい、と言えなかった。

 あぁ、会いたい。あいたい。
 きっと僕はまた言いたい事の一つも言えないままふにゃりと相好を崩すことしかできないのだろうけれど。それとも泣いてしまうかしら。
 あなたにあいたいのです。いつまででも待って居るから。今日もあなたはいつ帰ってくるかしらと詮無い事を考えたまま日が暮れて行きます。所詮僕には計り知れない事なのです。僕はこの賑やかな学園で細やかに門の番や事務仕事をしながら平和に暮らしている身で、あなたは風に便りすら伝えられぬ忍びの人です。
「会いたいです、利吉さん…」
 次にこの門を叩くのはいつですか。
 そして、もしも、もう一度接吻してもらえることがあればその時こそは、僕はあなたに何故、と口に出して問う事が出来るでしょうか。



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色々考えるこまつだくんなぞ
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