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ちょっとおしゃれである程度リーズナブルな、放課後デートとしては妥当な妥協点だと言える駅近くのカフェチェーンのテーブル席の一つに座っている私はさっきから地味な溜め息ばかり吐いている。うんと、ね、構って欲しいけどウザイとは思われたくないとかそういう微妙な心境で。
私の彼氏の一宮一志先輩は頭良いし、レギュラーにはなれなかったけど野球部だったから運動もそこそこ出来るし、あの野球部内じゃ他が濃すぎて目立たないけど結構イケメンだし、地味にカッコイイです。地味にって言うと怒るけど。何気にモテてたのも知ってるし。でも、そんな割と文句の付けどころ無さそうな先輩なのに彼女に対する温かさ、的な物はイマイチ足りない気がする。そーゆー、妙な余裕みたいなのがたまにすごいむかついちゃう時がある。
今だってキャラメルマキアートを飲んでいる私はデートのつもりでここに居るのに、きっと頼んだエスプレッソにろくに口も付けず参考書とにらみ合っている先輩は誰と何処で居ようが頭の中にあるのは受験だけなんだろうと思う。しょうが、ないけど。解ってるけど。構ってもらえないのは寂しいし我慢できないのが悔しい。
先輩、留年しちゃえばいいのに。
そんな、この時期冗談でも言っちゃいけないようなとこを考えている自分に嫌気が増す。でもでもそしたら先輩と私の学年差も無くなってもしかしたら同じクラスになれちゃったりするかもしれないし、一緒に受験勉強して同じ学校受けたりできるかもしれないし、…先輩が留年なんか有り得ないってわかってるからこんなこと言えるんだけど。先輩頭良いし。がんばって欲しいと思ってるのは嘘じゃないのに。
受験なんか、早く終わっちゃえばいいのに。でもそしたら先輩も卒業しちゃうんだよなぁ。…あぁ、いやだなぁ。テーブルに突っ伏して指先でぐるぐるとまるを描く。ヒマだ。ケータイもカチカチ音させるのきっと邪魔だろうなぁって思ったらあんまりチェック出来ないし。キャラメルマキアート、あたしを甘やかしてくれるのなんて君だけだ。…っていうのは嘘だなぁあ先輩達みんな後輩に甘いもん、目の前の先輩があたしのことあんまり恋人扱いしてくれないだけで。先輩、クールなのもいいけどたまにはエサもくれなきゃ魚は逃げちゃうよ。自分で言うのもどうかと思うけど、あたしそんなに小さい魚じゃないよ、多分。
「…さっきから何百面相してんの」
待ち望んでいた声だけど、急に話しかけられてちょっとびくってなったあたしを見て先輩は笑った。
「そんな、びびんなよ」
「先輩だって、笑わ…!っていうか、え、見て、え?」
「のの字みたいの書き出すし」
「えっ、そんな見てたの!?」
ほっぺた熱い。ずっと参考書に夢中であたしなんか見てないって思ってたのになんでそんな拗ねてるとこだけ見てるの。恥ずかしくて撃沈したあたしの頭を、先輩がぽんぽんってした。やばい、うれしい。現金だ。たったあれだけのことなのに。
「つーか桃坂宿題ねーの?やればいいじゃん、わかんないの見てやるし」
「…あー…うん…」
…それじゃいつもと同じなんだよなぁ。学校の図書館、居るのと…。
でも今の先輩じゃあ結局、勉強<あたしで構ってもらえない、しなぁ…。
しぶしぶプリントとノートとシャーペンを広げる。あとは、まともに解いてもしわかんないトコが何も無かったらどこで躓いた事にして構ってもらおうか考えるばかりだった。
あなたがすきです。キャラメルの匂いほど甘い、私の弱味。
+++
アンソロ企画原稿。
あんそろでいちももをかくことができてわたしはたいへんにまんぞくです・・・。
私の彼氏の一宮一志先輩は頭良いし、レギュラーにはなれなかったけど野球部だったから運動もそこそこ出来るし、あの野球部内じゃ他が濃すぎて目立たないけど結構イケメンだし、地味にカッコイイです。地味にって言うと怒るけど。何気にモテてたのも知ってるし。でも、そんな割と文句の付けどころ無さそうな先輩なのに彼女に対する温かさ、的な物はイマイチ足りない気がする。そーゆー、妙な余裕みたいなのがたまにすごいむかついちゃう時がある。
今だってキャラメルマキアートを飲んでいる私はデートのつもりでここに居るのに、きっと頼んだエスプレッソにろくに口も付けず参考書とにらみ合っている先輩は誰と何処で居ようが頭の中にあるのは受験だけなんだろうと思う。しょうが、ないけど。解ってるけど。構ってもらえないのは寂しいし我慢できないのが悔しい。
先輩、留年しちゃえばいいのに。
そんな、この時期冗談でも言っちゃいけないようなとこを考えている自分に嫌気が増す。でもでもそしたら先輩と私の学年差も無くなってもしかしたら同じクラスになれちゃったりするかもしれないし、一緒に受験勉強して同じ学校受けたりできるかもしれないし、…先輩が留年なんか有り得ないってわかってるからこんなこと言えるんだけど。先輩頭良いし。がんばって欲しいと思ってるのは嘘じゃないのに。
受験なんか、早く終わっちゃえばいいのに。でもそしたら先輩も卒業しちゃうんだよなぁ。…あぁ、いやだなぁ。テーブルに突っ伏して指先でぐるぐるとまるを描く。ヒマだ。ケータイもカチカチ音させるのきっと邪魔だろうなぁって思ったらあんまりチェック出来ないし。キャラメルマキアート、あたしを甘やかしてくれるのなんて君だけだ。…っていうのは嘘だなぁあ先輩達みんな後輩に甘いもん、目の前の先輩があたしのことあんまり恋人扱いしてくれないだけで。先輩、クールなのもいいけどたまにはエサもくれなきゃ魚は逃げちゃうよ。自分で言うのもどうかと思うけど、あたしそんなに小さい魚じゃないよ、多分。
「…さっきから何百面相してんの」
待ち望んでいた声だけど、急に話しかけられてちょっとびくってなったあたしを見て先輩は笑った。
「そんな、びびんなよ」
「先輩だって、笑わ…!っていうか、え、見て、え?」
「のの字みたいの書き出すし」
「えっ、そんな見てたの!?」
ほっぺた熱い。ずっと参考書に夢中であたしなんか見てないって思ってたのになんでそんな拗ねてるとこだけ見てるの。恥ずかしくて撃沈したあたしの頭を、先輩がぽんぽんってした。やばい、うれしい。現金だ。たったあれだけのことなのに。
「つーか桃坂宿題ねーの?やればいいじゃん、わかんないの見てやるし」
「…あー…うん…」
…それじゃいつもと同じなんだよなぁ。学校の図書館、居るのと…。
でも今の先輩じゃあ結局、勉強<あたしで構ってもらえない、しなぁ…。
しぶしぶプリントとノートとシャーペンを広げる。あとは、まともに解いてもしわかんないトコが何も無かったらどこで躓いた事にして構ってもらおうか考えるばかりだった。
あなたがすきです。キャラメルの匂いほど甘い、私の弱味。
+++
アンソロ企画原稿。
あんそろでいちももをかくことができてわたしはたいへんにまんぞくです・・・。
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えろさはありませんが、露骨な表現をしているので折り畳んでおきます。
一歩手前を、自分の胸の高さ辺りで、水色の毛糸玉が揺れながら進んでいる。
というのはあくまでも比喩表現であって、実際にぷかぷかと毛糸玉が宙に浮く様な怪現象が目の前で繰り広げられている訳ではない。ただ、犬飼には目の前を歩いている猫湖の頭がそう映ったのだった。まるくて、くるくるして、ふわふわしていた。
改めて周りを見渡すと、全く以て皆ぎゃあぎゃあと五月蝿い事この上なかった。五月蝿いのはいつものことに他ならなかったが、今日はそれに輪をかけて五月蝿かった。遊園地なんてたしかに騒ぐためにあるような場所だし、野球部レギュラー組の1年にマネージャーも一緒だなんて確かに騒ぐための面子なんだろうが、あんなにはしゃいでいて疲れないのか。あの雰囲気が苦手だとは言わないが、なんとなく今日は一歩引いたところで聞いているうちに列の最後尾に落ち着いていた。
目の前の小さな頭を見下ろす。猫湖だけはいつもと変わらず静かで控えめでおとなしかった。細かな小花の柄の散ったワンピースを着ていた。肩も腕も白くて、細くて小さくて、どこから見ても女子だった。どこからどう見ても女子だったけれど、今ならあまり怖くない様な気がした。
ふわふわ、ゆらゆら。
ゆるく波打つ水色の髪の毛は、とても柔らかそうだった。頭を撫でたら見た目通りふわふわするのだろうか。ぼんやりと考えだすとどうにも確かめたくてしょうがなくなってくる。
ゆらゆら、くるくる。
ついつい誘われるまま手を伸ばす。ふわりと指にふれた髪はさらさらと流れるように滑った。小さい、と思った。そしてあたたかかった。その小さな頭がぐりんと振り返ったことと猫湖の驚いた表情で、犬飼はさっき自分が撫でたものが彼女の頭であったことと、自分がいったい何をしたのかを思い出し理解し固まった。自分は同級生の、女子の、同じ部活の、猫湖檜の頭を撫でてしまったのだった。言うまでもなく彼女は自分の家族でもないし当然いつもぐりぐり頭を撫でてやっている飼い犬のトリアエズとも全く違う。同級生の、女子の、頭を撫でてしまった。
爆発。
一気に顔に血が上って赤くなったのが自分でも分かる。
「ご、ごめ…!」
ぱちぱちと長い睫毛を瞬かせていた檜は、頭を撫でられた事よりも犬飼のその反応に引きずられて少し顔を赤くした。予想外の相手に触れられたことには驚いたが、昔から小柄でマスコットかお人形の様な扱いをされてばかりいるから撫でられること自体には慣れていた。対する犬飼の方は真っ赤になったまま固まっている。俯いたところで、そこに相手の顔があるのだからどうしようもない。
「いぬかい、くん?」
「とりあえず、悪かった…」
しばらくそんな犬飼の様子を見つめていた檜は、ふと何かに思い当たったように口を開いた。今こうして向き合った状態でなら、この人は、もしかしたら私の話を聞いてくれるのかもしれないと思ったのだ。彼女なりに、既に何度か周囲に向けて自分の気持ちを発信しているのだがどうにも舞い上がっているらしい仲間達には彼女の声は届いていないようだった。でも、今なら。ちゃんと目を見て話せたら、耳を傾けてもらえるかもしれない。
「…おこってないから、コーヒーカップ…」
「…は?」
「乗りたいから、付き合ってほしいかも…」
突然の提案に犬飼は一瞬顔色を戻して、しかしやはりまたすぐに赤面した。コーヒーカップというのはあの、くるくるまわるアトラクションだ。そこに猫湖と一緒に?しかも自分があの可愛らしい遊具に乗っている図というのは、他人からみると大分滑稽に見えるのではないだろうか。そう考えだして狼狽える犬飼を見て檜は慌てて前言を打ち消した。困らせてしまうのは本意ではない。
「や、やっぱり犬飼くんはジェットコースターの方が面白いだろうし、いい、かも」
お互い妙な遠慮感を漂わせたまま、犬飼は檜を伺い見る。多分猫湖も普段そんなに頻繁にしゃべる事も無い男子なんかとよりも同じ女マネの清熊や鳥居とこそ楽しみたいのだろう。しかし現状…彼女たちは当分輪の中から解放されそうにない。勝手に触ってしまった負い目も、確かにあった。
「とりあえず、行くぞ」
「え」
「…コーヒーカップ…」
それを聞いた檜はぱあっと顔色を明るくして、こくこくと頷いた。
「あっちかも!」
「!?」
次の瞬間、全く予期していなかったことに檜に手を引かれ、犬飼はびくんと肩を跳ねさせた。熱い。熱い!何の意識もしていなさそうな猫湖はただただ楽しそうで、隙あらば接触してこようとするファンの女子とは違う気がしたけれど、…やっぱり女は何を考えているかわからない、と思った。
一方十二支野球部一年様ご一行、はというと目当てのジェットコースターの乗り場で並ぶ段になってやっと頭数が足りていない事に気付いた。慌てて見渡した人込みの先に耳を真っ赤にした長身の後ろ姿が遠ざかっていくのを見つけた彼らは、当然のようにざわめいてその後を追った。
はたして、ふたりを乗せたコーヒーカップが止まる頃、アトラクション出口には追いかけてきた面々が勢揃いしていた。大半が肩を怒らせているか面白そうに口元をニヤつかせている。
「団体行動乱して抜け駆けしてんじゃねーぞコゲ犬!」
「犬飼テメー何ちゃっかり檜と2人っきりになってんだよ!」
「犬飼くんが女の子と抜け出しちゃうなんて意外~♪」
当然の様に一同の舌鋒や冷やかしを一身に受け犬飼はたじろぐ。俺は悪くないと言い訳したいがこの調子では何を言っても受け入れられない気がする。
「…だって」
しかし先に口を開いたのは責められている犬飼ではなく俯いていた檜の方で、更に言葉を続けさせようとしていた面子は彼女を振り返った。
「絶叫系は苦手だから私はジェットコースター乗るのやめとくかもって言ったのに、みんな騒いでて他に誰も聞いてくれなかった…かも」
犬飼のシャツの裾をきゅっと握ったまま、キッと顔を上げた彼女に皆一様に目を白黒させる。
「私がお願いして一緒に来てもらったのに、勝手に犬飼くんを責めるのはお門違い、かも!」
察するに、彼女は怒っているらしかった。
頬を僅かに赤らめ、眉間にかわいらしく皺を寄せた檜はそのままずんずんと人波を縫って歩き出す。シャツを掴まれたままの犬飼も必然的に着いていく。それから、周囲が慌てたように付き従った。休日の遊園地で華奢な少女が一際背の高い美丈夫を引っ張って歩き、その周りを焦った高校生達が宥めてまわる光景は微笑ましいとも言えたけれど…簡単に言うと、異様だった。
太陽はまだまだ高く、一層の暑さが見込まれた夏の日の一コマ。
+++
犬猫がコーヒーカップなんか乗ってたらさぞかわいいだろうな、と思った。
どちらかというとまだ犬+猫なんですが。
アンソロ企画提出原稿に多少加筆修正。
というのはあくまでも比喩表現であって、実際にぷかぷかと毛糸玉が宙に浮く様な怪現象が目の前で繰り広げられている訳ではない。ただ、犬飼には目の前を歩いている猫湖の頭がそう映ったのだった。まるくて、くるくるして、ふわふわしていた。
改めて周りを見渡すと、全く以て皆ぎゃあぎゃあと五月蝿い事この上なかった。五月蝿いのはいつものことに他ならなかったが、今日はそれに輪をかけて五月蝿かった。遊園地なんてたしかに騒ぐためにあるような場所だし、野球部レギュラー組の1年にマネージャーも一緒だなんて確かに騒ぐための面子なんだろうが、あんなにはしゃいでいて疲れないのか。あの雰囲気が苦手だとは言わないが、なんとなく今日は一歩引いたところで聞いているうちに列の最後尾に落ち着いていた。
目の前の小さな頭を見下ろす。猫湖だけはいつもと変わらず静かで控えめでおとなしかった。細かな小花の柄の散ったワンピースを着ていた。肩も腕も白くて、細くて小さくて、どこから見ても女子だった。どこからどう見ても女子だったけれど、今ならあまり怖くない様な気がした。
ふわふわ、ゆらゆら。
ゆるく波打つ水色の髪の毛は、とても柔らかそうだった。頭を撫でたら見た目通りふわふわするのだろうか。ぼんやりと考えだすとどうにも確かめたくてしょうがなくなってくる。
ゆらゆら、くるくる。
ついつい誘われるまま手を伸ばす。ふわりと指にふれた髪はさらさらと流れるように滑った。小さい、と思った。そしてあたたかかった。その小さな頭がぐりんと振り返ったことと猫湖の驚いた表情で、犬飼はさっき自分が撫でたものが彼女の頭であったことと、自分がいったい何をしたのかを思い出し理解し固まった。自分は同級生の、女子の、同じ部活の、猫湖檜の頭を撫でてしまったのだった。言うまでもなく彼女は自分の家族でもないし当然いつもぐりぐり頭を撫でてやっている飼い犬のトリアエズとも全く違う。同級生の、女子の、頭を撫でてしまった。
爆発。
一気に顔に血が上って赤くなったのが自分でも分かる。
「ご、ごめ…!」
ぱちぱちと長い睫毛を瞬かせていた檜は、頭を撫でられた事よりも犬飼のその反応に引きずられて少し顔を赤くした。予想外の相手に触れられたことには驚いたが、昔から小柄でマスコットかお人形の様な扱いをされてばかりいるから撫でられること自体には慣れていた。対する犬飼の方は真っ赤になったまま固まっている。俯いたところで、そこに相手の顔があるのだからどうしようもない。
「いぬかい、くん?」
「とりあえず、悪かった…」
しばらくそんな犬飼の様子を見つめていた檜は、ふと何かに思い当たったように口を開いた。今こうして向き合った状態でなら、この人は、もしかしたら私の話を聞いてくれるのかもしれないと思ったのだ。彼女なりに、既に何度か周囲に向けて自分の気持ちを発信しているのだがどうにも舞い上がっているらしい仲間達には彼女の声は届いていないようだった。でも、今なら。ちゃんと目を見て話せたら、耳を傾けてもらえるかもしれない。
「…おこってないから、コーヒーカップ…」
「…は?」
「乗りたいから、付き合ってほしいかも…」
突然の提案に犬飼は一瞬顔色を戻して、しかしやはりまたすぐに赤面した。コーヒーカップというのはあの、くるくるまわるアトラクションだ。そこに猫湖と一緒に?しかも自分があの可愛らしい遊具に乗っている図というのは、他人からみると大分滑稽に見えるのではないだろうか。そう考えだして狼狽える犬飼を見て檜は慌てて前言を打ち消した。困らせてしまうのは本意ではない。
「や、やっぱり犬飼くんはジェットコースターの方が面白いだろうし、いい、かも」
お互い妙な遠慮感を漂わせたまま、犬飼は檜を伺い見る。多分猫湖も普段そんなに頻繁にしゃべる事も無い男子なんかとよりも同じ女マネの清熊や鳥居とこそ楽しみたいのだろう。しかし現状…彼女たちは当分輪の中から解放されそうにない。勝手に触ってしまった負い目も、確かにあった。
「とりあえず、行くぞ」
「え」
「…コーヒーカップ…」
それを聞いた檜はぱあっと顔色を明るくして、こくこくと頷いた。
「あっちかも!」
「!?」
次の瞬間、全く予期していなかったことに檜に手を引かれ、犬飼はびくんと肩を跳ねさせた。熱い。熱い!何の意識もしていなさそうな猫湖はただただ楽しそうで、隙あらば接触してこようとするファンの女子とは違う気がしたけれど、…やっぱり女は何を考えているかわからない、と思った。
一方十二支野球部一年様ご一行、はというと目当てのジェットコースターの乗り場で並ぶ段になってやっと頭数が足りていない事に気付いた。慌てて見渡した人込みの先に耳を真っ赤にした長身の後ろ姿が遠ざかっていくのを見つけた彼らは、当然のようにざわめいてその後を追った。
はたして、ふたりを乗せたコーヒーカップが止まる頃、アトラクション出口には追いかけてきた面々が勢揃いしていた。大半が肩を怒らせているか面白そうに口元をニヤつかせている。
「団体行動乱して抜け駆けしてんじゃねーぞコゲ犬!」
「犬飼テメー何ちゃっかり檜と2人っきりになってんだよ!」
「犬飼くんが女の子と抜け出しちゃうなんて意外~♪」
当然の様に一同の舌鋒や冷やかしを一身に受け犬飼はたじろぐ。俺は悪くないと言い訳したいがこの調子では何を言っても受け入れられない気がする。
「…だって」
しかし先に口を開いたのは責められている犬飼ではなく俯いていた檜の方で、更に言葉を続けさせようとしていた面子は彼女を振り返った。
「絶叫系は苦手だから私はジェットコースター乗るのやめとくかもって言ったのに、みんな騒いでて他に誰も聞いてくれなかった…かも」
犬飼のシャツの裾をきゅっと握ったまま、キッと顔を上げた彼女に皆一様に目を白黒させる。
「私がお願いして一緒に来てもらったのに、勝手に犬飼くんを責めるのはお門違い、かも!」
察するに、彼女は怒っているらしかった。
頬を僅かに赤らめ、眉間にかわいらしく皺を寄せた檜はそのままずんずんと人波を縫って歩き出す。シャツを掴まれたままの犬飼も必然的に着いていく。それから、周囲が慌てたように付き従った。休日の遊園地で華奢な少女が一際背の高い美丈夫を引っ張って歩き、その周りを焦った高校生達が宥めてまわる光景は微笑ましいとも言えたけれど…簡単に言うと、異様だった。
太陽はまだまだ高く、一層の暑さが見込まれた夏の日の一コマ。
+++
犬猫がコーヒーカップなんか乗ってたらさぞかわいいだろうな、と思った。
どちらかというとまだ犬+猫なんですが。
アンソロ企画提出原稿に多少加筆修正。
真っ白のワンピース。それに勝るとも劣らない白い首筋、華奢な肩に僕の心臓はとくとくと揺さぶられる。くるりと波打つ髪。ベッドの上で抱えた膝に額を預けて庭を眺める君を見ていると、今にも太陽に溶けて消えてしまいそうで、空に帰ってしまいそうで、ぴりぴりとした焦燥に駆られる。
酷く横暴だけれど、時々君の瞳に僕が映っていないことが不安でたまらなくなるんだ。
「…何?」
「羽根が見えそうだった」
「は?」
「君の背中に。」
「…ばかじゃないの」
ばか。繰り返す君の声は柔らかい。
「飛んで行きそうだったよ」
「どこにも行きやしないよ、今は」
「今は?」
「何なの?っていうかもう慣れたけどさぁ、そりゃ家にも帰んなきゃいけないし学校も行かなきゃ行けないでしょ。…この説明、いちいち毎回要る?」
ううん、と肯定でも否定でもない間延びした声を出したら前髪を引っ張られた。
「柿枝くん、それ痛い」
「知ってるよ。…だから、そんなにぎゅうぎゅうアタシを押し潰そうとしなくたってまだここに居るってば」
「だから今のうちにこうしとくんじゃないか」
君の体温を忘れないように。
なんて、半分ほんとで半分ウソ。彼女を抱いた腕にまた少し力を込める。
別に君が家に帰っていくことが不満な訳じゃないし、どうせ学校に行けば会える。クラスが一緒なんだから当然だ、嫌でも顔を合わすだろう。ただ本当に君が居なくなってしまうような錯覚が消えなくて戸惑うだけなんだ。窓を開けてバルコニーに出たら、そのままふらりと浮き上がって僕のことも忘れて飛んでいきそうで。
「それってアタシよりも、クラシックでメルヘンなこの部屋のせいじゃないの」
「…そう?」
「だってなんかアンタもそのうちそこらへんの廊下の角にある石像の一個とかになってそうだもん」
クスクス笑う君の声に溶けたのは僕の中の不安の角。
「ほんっと、ムカつく睫毛と鼻の高さよね」
「はな、いひゃい」
「知ってるわよ、アタシもそろそろ肩とか痛いんだけど。いい加減解放してくんない?」
「…どうぞ、お姫さま」
「どーも。」
昔はこんな軽口──勿論僕は大分本気で言っているけれど──を叩こうものなら顔を赤くして散々ムキになって否定したのに、もう慣れた風だ。大分感化されたよね、君も、僕に。そんなちっさな感慨が僕を満足させる。
「ニヤニヤすんな、ばーか」
心配なのは君が飛び立ってしまうことじゃない、どんなに愛しくても天使は手元に置いてなんて置けないってことだよ。だから僕は何時君の肩胛骨から小さな翼が現れるかとびくびくしている。ねぇ、我儘を聞いて欲しい。もし君が僕と同じように望んでくれるなら、もし君が空を飛んで天まで行ける翼を持っていたとしてもずっと畳んだままでいて。
+++
勢いだけで30分で書けた\(^∀^)/愛!
つーかまぁ短いからなんだろうが。
酷く横暴だけれど、時々君の瞳に僕が映っていないことが不安でたまらなくなるんだ。
「…何?」
「羽根が見えそうだった」
「は?」
「君の背中に。」
「…ばかじゃないの」
ばか。繰り返す君の声は柔らかい。
「飛んで行きそうだったよ」
「どこにも行きやしないよ、今は」
「今は?」
「何なの?っていうかもう慣れたけどさぁ、そりゃ家にも帰んなきゃいけないし学校も行かなきゃ行けないでしょ。…この説明、いちいち毎回要る?」
ううん、と肯定でも否定でもない間延びした声を出したら前髪を引っ張られた。
「柿枝くん、それ痛い」
「知ってるよ。…だから、そんなにぎゅうぎゅうアタシを押し潰そうとしなくたってまだここに居るってば」
「だから今のうちにこうしとくんじゃないか」
君の体温を忘れないように。
なんて、半分ほんとで半分ウソ。彼女を抱いた腕にまた少し力を込める。
別に君が家に帰っていくことが不満な訳じゃないし、どうせ学校に行けば会える。クラスが一緒なんだから当然だ、嫌でも顔を合わすだろう。ただ本当に君が居なくなってしまうような錯覚が消えなくて戸惑うだけなんだ。窓を開けてバルコニーに出たら、そのままふらりと浮き上がって僕のことも忘れて飛んでいきそうで。
「それってアタシよりも、クラシックでメルヘンなこの部屋のせいじゃないの」
「…そう?」
「だってなんかアンタもそのうちそこらへんの廊下の角にある石像の一個とかになってそうだもん」
クスクス笑う君の声に溶けたのは僕の中の不安の角。
「ほんっと、ムカつく睫毛と鼻の高さよね」
「はな、いひゃい」
「知ってるわよ、アタシもそろそろ肩とか痛いんだけど。いい加減解放してくんない?」
「…どうぞ、お姫さま」
「どーも。」
昔はこんな軽口──勿論僕は大分本気で言っているけれど──を叩こうものなら顔を赤くして散々ムキになって否定したのに、もう慣れた風だ。大分感化されたよね、君も、僕に。そんなちっさな感慨が僕を満足させる。
「ニヤニヤすんな、ばーか」
心配なのは君が飛び立ってしまうことじゃない、どんなに愛しくても天使は手元に置いてなんて置けないってことだよ。だから僕は何時君の肩胛骨から小さな翼が現れるかとびくびくしている。ねぇ、我儘を聞いて欲しい。もし君が僕と同じように望んでくれるなら、もし君が空を飛んで天まで行ける翼を持っていたとしてもずっと畳んだままでいて。
+++
勢いだけで30分で書けた\(^∀^)/愛!
つーかまぁ短いからなんだろうが。
まるでお人形みたいな、僕のお姫さま。
不思議な色の髪の毛はふわふわに波打っていて、不思議な色の瞳はびっくりして目を見開いた時なんて零れてしまいそうに大きいのにいつも伏し目がち。肌の色は真っ白。野球部のマネージャーなんてやってるのに、さぼってる訳でも無いのに紅葉みたいな手をしていて丸い爪は薄い薄い桜色。ちいさくってビスクドールみたい。とても愛らしいのに、いつだってどこか憂鬱そうな表情をしている。
一番の理解者はヌイグルミの猫神様とタロットカード。学校でも1・2位を争う不思議ちゃん。それが僕の彼女、猫湖檜ちゃん。
「檜ちゃん、かーえろっ!」
「うん…っ」
僕こと兎丸比乃は、なかなかの行動派だと自負している。猛アタックして、1週間前に「彼氏」の座を手にして以来積極的に一緒に帰るし、冷やかされたって檜ちゃんの恋人は自分であると公言して憚らない。檜ちゃんはおとなしいから幼稚な男子逹からは格好のからかいの的にされがちだけど、それも気付けば直ぐに笑顔で釘を刺すようにしている。悪い芽は早めに摘んでおかないとね。
「日誌があるから、ちょっと待ってて欲しいかも…」
「いいよー」
こうやって申し訳なさそうに少し上目遣いになるところなんて、すっごくかわいい。ごめんね、って言ってゆっくりだけど一生懸命今日の部活であった事を日誌に書き入れていく。シャーペンを置いてふうって一息ついて、間違いはないかもう一度最初から読み返している檜ちゃんを、僕はそのデスクに肘をついて眺めている。まつ毛、長いなぁ。
「終わった、かも…」
「じゃあ行こっ、先輩たちさよーなら!」
「お先に、失礼します」
ぺこり。ぱたぱたぱた。仕草の1つ1つまで誰かが作ったみたい。
いつもの調子でギャーギャーやってる兄ちゃん逹に手を振って2人で校門を潜る。一緒に帰るって言っても駅までだけど、放課後は部活ばかりの僕らにとっては大切なデート。今日も暑かったねぇ、とかそんな他愛もないことを僕が話して檜ちゃんがいつも頷く。たったそれだけだけどやっぱり皆が居るのと2人で居るのは違う。と、思う。
「…檜ちゃん、鞄重くない?」
いつも思っていたのだけれど、僕以上に小さい檜ちゃんが大きな猫神さまと通学鞄を持っているのはなんだかとても辛そうに見える。律儀に教科書をきちんと持って帰るから鞄はぱんぱんだし。僕なんて、全部部活用のバックに放り込んじゃうから教科書どころか鞄すら持っていない。
「大丈夫かも」
「持ってあげるよ?」
「へ、平気、だから…」
そんなことしたら比乃くんの方が重そうかも。なんて言うけど、曲がりなりにもスポーツマンなんだからそれなりに筋肉も付いてるんだけどなぁ。
「そんなにヤワじゃないよー」
檜ちゃんが右手に持っている鞄を肩にかけて代わりに手を繋ぐ。檜ちゃんの表情が緊張して、猫神さまを抱いている左手に力がこもったのがわかった。あー…、やっちゃったかも?
行動派を自称する僕ではあるけれど、実はまだ檜ちゃんには全然触っていない。押しに押してやっとOKしてもらったお付き合いだし檜ちゃんはいかにも“男子”に免疫無さそうだし、大切に大切にしようと思っていたし。いるし。一応、1週間の間少しは仲良くなれたかなぁと思ってのトライだったんだけど。
「…嫌だった?」
あぁ、俯いちゃった。どうしよう、手、放した方がいいのかな。でも実は檜ちゃんの手にも結構な力が入っていて、ビックリしちゃってだと…は、思うんだけど、無理に振りほどくのもなぁって言いながらほんとはちょっと役得?とか思ってる。そりゃあ僕だって多少の下心は否めないお年頃で折角の恋なら進展させたいと思うのが、人情で。
「…いやじゃ、ないかも…」
そこにこの一言は浮かれるのには充分の破壊力でしょう。
もう真っ赤で恥ずかしそうなのも、檜ちゃんはきっと必死だったんだろうけれど可愛くて可愛くて仕方なくなってしまう。これでも純情な高校生やってるんだから少しくらい有頂天でにやけてても許して欲しい。
そのまま駅まで一直線!に、走りだそうとして手を繋いでいる時間が勿体なくて足をゆっくり歩くスピードに切り替える。15分の道のりの間、僕らは何時も以上に饒舌で何時も以上に寡黙だった。
次の日になって、一部始終を見ていたらしい兄ちゃんにお前らどんだけ青春してるんだよと言われたのはまた別のお話。
+++
終わった!
実はOKした日から猫ちゃんの呼び方が兎丸くんから比乃くんに変わってたりすると超かわいいと思う。
兎猫は見た目がちっこくてかわいいよね!!
不思議な色の髪の毛はふわふわに波打っていて、不思議な色の瞳はびっくりして目を見開いた時なんて零れてしまいそうに大きいのにいつも伏し目がち。肌の色は真っ白。野球部のマネージャーなんてやってるのに、さぼってる訳でも無いのに紅葉みたいな手をしていて丸い爪は薄い薄い桜色。ちいさくってビスクドールみたい。とても愛らしいのに、いつだってどこか憂鬱そうな表情をしている。
一番の理解者はヌイグルミの猫神様とタロットカード。学校でも1・2位を争う不思議ちゃん。それが僕の彼女、猫湖檜ちゃん。
「檜ちゃん、かーえろっ!」
「うん…っ」
僕こと兎丸比乃は、なかなかの行動派だと自負している。猛アタックして、1週間前に「彼氏」の座を手にして以来積極的に一緒に帰るし、冷やかされたって檜ちゃんの恋人は自分であると公言して憚らない。檜ちゃんはおとなしいから幼稚な男子逹からは格好のからかいの的にされがちだけど、それも気付けば直ぐに笑顔で釘を刺すようにしている。悪い芽は早めに摘んでおかないとね。
「日誌があるから、ちょっと待ってて欲しいかも…」
「いいよー」
こうやって申し訳なさそうに少し上目遣いになるところなんて、すっごくかわいい。ごめんね、って言ってゆっくりだけど一生懸命今日の部活であった事を日誌に書き入れていく。シャーペンを置いてふうって一息ついて、間違いはないかもう一度最初から読み返している檜ちゃんを、僕はそのデスクに肘をついて眺めている。まつ毛、長いなぁ。
「終わった、かも…」
「じゃあ行こっ、先輩たちさよーなら!」
「お先に、失礼します」
ぺこり。ぱたぱたぱた。仕草の1つ1つまで誰かが作ったみたい。
いつもの調子でギャーギャーやってる兄ちゃん逹に手を振って2人で校門を潜る。一緒に帰るって言っても駅までだけど、放課後は部活ばかりの僕らにとっては大切なデート。今日も暑かったねぇ、とかそんな他愛もないことを僕が話して檜ちゃんがいつも頷く。たったそれだけだけどやっぱり皆が居るのと2人で居るのは違う。と、思う。
「…檜ちゃん、鞄重くない?」
いつも思っていたのだけれど、僕以上に小さい檜ちゃんが大きな猫神さまと通学鞄を持っているのはなんだかとても辛そうに見える。律儀に教科書をきちんと持って帰るから鞄はぱんぱんだし。僕なんて、全部部活用のバックに放り込んじゃうから教科書どころか鞄すら持っていない。
「大丈夫かも」
「持ってあげるよ?」
「へ、平気、だから…」
そんなことしたら比乃くんの方が重そうかも。なんて言うけど、曲がりなりにもスポーツマンなんだからそれなりに筋肉も付いてるんだけどなぁ。
「そんなにヤワじゃないよー」
檜ちゃんが右手に持っている鞄を肩にかけて代わりに手を繋ぐ。檜ちゃんの表情が緊張して、猫神さまを抱いている左手に力がこもったのがわかった。あー…、やっちゃったかも?
行動派を自称する僕ではあるけれど、実はまだ檜ちゃんには全然触っていない。押しに押してやっとOKしてもらったお付き合いだし檜ちゃんはいかにも“男子”に免疫無さそうだし、大切に大切にしようと思っていたし。いるし。一応、1週間の間少しは仲良くなれたかなぁと思ってのトライだったんだけど。
「…嫌だった?」
あぁ、俯いちゃった。どうしよう、手、放した方がいいのかな。でも実は檜ちゃんの手にも結構な力が入っていて、ビックリしちゃってだと…は、思うんだけど、無理に振りほどくのもなぁって言いながらほんとはちょっと役得?とか思ってる。そりゃあ僕だって多少の下心は否めないお年頃で折角の恋なら進展させたいと思うのが、人情で。
「…いやじゃ、ないかも…」
そこにこの一言は浮かれるのには充分の破壊力でしょう。
もう真っ赤で恥ずかしそうなのも、檜ちゃんはきっと必死だったんだろうけれど可愛くて可愛くて仕方なくなってしまう。これでも純情な高校生やってるんだから少しくらい有頂天でにやけてても許して欲しい。
そのまま駅まで一直線!に、走りだそうとして手を繋いでいる時間が勿体なくて足をゆっくり歩くスピードに切り替える。15分の道のりの間、僕らは何時も以上に饒舌で何時も以上に寡黙だった。
次の日になって、一部始終を見ていたらしい兄ちゃんにお前らどんだけ青春してるんだよと言われたのはまた別のお話。
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終わった!
実はOKした日から猫ちゃんの呼び方が兎丸くんから比乃くんに変わってたりすると超かわいいと思う。
兎猫は見た目がちっこくてかわいいよね!!